2011年のノーベル賞、何がすごい?(TLRと樹状細胞)
自然免疫の細胞(マクロファージ・樹状細胞)には、ウイルスや細菌の感染を見分ける能力があることの発見。さらにその情報を獲得免疫に伝える樹状細胞の発見に対して贈られました。
マクロファージや樹状細胞は病原体を食べて体を守るだけでなく、抗原の情報を獲得免疫に教えます。
この抗原提示をもとにキラーT細胞の活性化やB細胞の抗体産生が行われます。未知なものも含め、あらゆる病原体に対処する獲得免疫の方が高等な機能を持つと考えられていましたが、実はマクロファージや樹状細胞の膜表面にあるトル様受容体 (TLRs) によって自然免疫の段階で、ある程度病原体を見分けていることが分かりました。
ヒトで10種類ある TLRが感知する病原体の多くを発見したのが審良静男博士です。TLRに病原体の情報が伝わると、自然免疫から獲得免疫に活性化の信号が送られT細胞が働きだします。この信号が無くては獲得免疫がうまく働かないため、それまでの免疫システムの概念は一変しました。自然免疫と獲得免疫が早い段階から協力して生態を防御しており、それをつないでいるのが樹状細胞だと分かったのです。樹状細胞を発見・同定したラルフ・スタインマン博士は他の2人の科学者とともに2011年のノーベル医学・生理学賞を受賞しました。
執筆:2021年9月
文責:大阪大学免疫学フロンティア研究センター・微生物病研究所
イラスト:長門香織
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