Th1/Th2バランスって何?
ヘルパーT細胞には、タイプ1型 (Th1) とタイプ2型 (Th2) があります。Th1 は細胞性免疫、Th2 は液性免疫を担当しており、そのバランスが狂うと病気に結びつくことがあります。
Th1細胞、Th2細胞はともにヘルパーT細胞ですが、途中から分かれて別の運命をたどります。Th1細胞は、キラーT細胞に指令を出し、ウイルスや一部の細菌などの細胞内病原体、あるいはがん細胞の排除に働きます。その際、IL-12とIFN-γが重要なサイトカインです。Th2細胞は、寄生虫などの大きな細胞外生物に対する防御に重要であり、IL-4、IL-5、IL-13などのサイトカインを利用します。B細胞に抗体産生の指令を出すのも Th2細胞です。獲得免疫の司令塔である2種類の細胞ですが、どちらが働きすぎても問題が起きます。そのために、それぞれの細胞から分泌されるサイトカインがお互いの働きを抑制し合うようにも働いています。そうすることで、Th1細胞とTh2細胞による獲得免疫のバランスは保たれています
もし Th1細胞の働きが過剰に強くなると、ウイルスやがん細胞の排除に使う力を自らの組織や細胞に対して使ってしまい、自己免疫疾患となってしまいます。逆にTh2細胞が強すぎると、寄生虫排除に使う力を花粉やダニ、あるいは食物に含まれるそれほど強くないアレルゲンに対して使うことになります。その結果、IgE抗体が過剰に発現します。これが現代人、特に先進国に多い花粉症やアトピー性皮膚炎の原因とされています。Th1/Th2の問題は、免疫にはバランスが大事だという好例といえます。
執筆:2021年9月
文責:大阪大学免疫学フロンティア研究センター・微生物病研究所
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