どうやって病原体を覚えているの?

一部のリンパ球は、病原体と接触してもそのときは直接戦わず、記憶細胞となって次回の感染に備えます。

B細胞は病原体の抗原情報をもとに抗体というタンパク質を作り、病原体に対抗することで身体を守っています。しかし病原体情報を知ったB細胞がすべて抗体を産生するわけではありません。その一部は「記憶B細胞」となって体に残り、かなりの長期間にわたって記憶を維持します。また、T細胞の一部も「記憶T細胞」となることが知られます。これを利用して病気の記憶を植え付けるのがワクチン(予防接種)です。一方で、細胞は細胞死と再生を繰り返しているので、いつかは感染(あるいはワクチン接種)の記憶を持った細胞もいなくなるはずです。ところが、天然痘のように一生病気の記憶が維持される感染症もあるため、免疫記憶とそれをつかさどる記憶細胞は大変興味深い研究対象になっています。

執筆:2021年9月
文責:大阪大学免疫学フロンティア研究センター・微生物病研究所
イラスト:長門香織

感染症

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