麻しん(はしか)ワクチン
ワクチン2回接種が実施されてから減少傾向
麻しんウイルスによる感染症で、39℃以上の高熱と発疹が出ます。日本では2000年前後に流行し、年間約20~30人の死亡例がありました。しかし、2006年に麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)の2回接種が実施され、さらに、2008年から2013年にかけて、麻しんのワクチン接種機会が1回だった世代を対象に2回目の接種を実施したため、麻しんの発生数は大幅に減少しました。
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ワクチン接種は1歳と小学校入学前の計2回
麻しんは空気感染するため、手洗いやマスクでは十分に予防ができません。そのため、ワクチンによる予防が最も重要です。市町村が費用を負担する「定期接種」として、1歳と小学校入学前の1年間の計2回、接種することができます。その期間外に接種する場合は、自分で費用を負担する「任意接種」となります。
麻しんは症状が重く、感染力が非常に強いため、1歳になった後にできるだけ早く、最初の接種を行うことが望ましいとされています。
1歳になる前だと、お母さんのおなかの中にいた時にお母さんからもらっていた抗体が残っている場合があり、その場合はワクチンが効きにくくなってしまう可能性があります。
定期接種では混合ワクチン(MRワクチン)を使用
現在、国内の定期接種では麻しんワクチンと風しんワクチンを混合した「MRワクチン」の使用が推奨されています。ワクチンの種類は、ウイルスを弱めて病気を起こさないようにした「生ワクチン」です。
<MRワクチンを製造しているメーカー>
・第一三共株式会社
・武田薬品工業株式会社
・一般財団法人阪大微生物病研究会 (50音順)
<麻しんの単抗原ワクチンを製造しているメーカー>
・武田薬品工業株式会社
ワクチン接種で95%の人に免疫
麻しん含有ワクチン※を接種することによって、95%程度の人が麻しんウイルスに対する免疫を獲得することができると言われています。
※ 現在使用されている麻しん含有ワクチンには、MRワクチン、麻しん単抗原ワクチンがあります。
ワクチン全般における副反応の種類と対策・対応
ワクチンを接種して期待される免疫効果と同時に、接種箇所の赤み、はれ、痛み等の望ましくない局所反応や発熱、リンパ節腫脹等の全身反応を惹起することが多く、これらは“副反応”と呼ばれています。
ワクチンの種類によっても異なりますが、発熱、接種箇所の赤み、はれ、しこり、発疹などが比較的高い頻度(数%から数十%)で認められます。通常、数日以内に自然に治るので心配の必要はありません。ただし、接種箇所のひどいはれ、高熱、ひきつけなどの症状がある場合は、医師の診察を受けてください。
ワクチンの種類によっては、極めてまれ(百万から数百万人に1人程度)に脳炎や神経障害などの重い副反応が生じることがあります。このような場合、健康被害を受けた本人やその家族が救済の請求を行うことで、審査が行われ、認定されたときは給付の対象となります。定期接種の場合は、予防接種法に基づく健康被害救済の対象となるため、救済の請求は、予防接種を受けたときに住民票を登録していた市区町村に対して行います。一方、任意接種の場合は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法に基づく救済の対象となるため、救済の請求は独立行政法人医薬品医療機器総合機構に対して行います。
ワクチンを接種した後はその場でしばらく様子を見ること、帰宅後もすぐに医師と連絡をとれるようにしておくことが必要です。
現在、日本は「麻しんウイルスが排除された国」
日本では2010年11月以降、麻しんの感染は海外から持ち込まれたケースしか確認されていません。このため、世界保健機関(WHO)は2015年3月、日本を麻しんウイルスが排除された国(麻しん排除国)に認めました。その後も排除された状態が続いています。
ただし、海外にはまだ麻しんウイルスが排除されていない国が多く存在し、国内にウイルスが持ち込まれ、感染者が発生するケースが度々報告されています。そのため、国内のウイルスが排除された今でも、ワクチン接種を続ける必要があります。
定期接種化後、徐々に患者数が減少
日本では、ワクチンが実用化されるまでは、大規模な流行が数年おきに発生していました。その後、1960年代中頃にワクチンが実用化され、1978年に予防接種が定期化されてからは徐々に感染者数が減少し、2009年以降は1000人を下回っています。
麻しんは感染力が非常に強く、流行を抑え込むには95%以上のワクチン接種率を維持することが必要です。
参考文献
・一般社団法人日本ワクチン産業協会「2023ワクチンの基礎ワクチン類の製造から流通まで」2023.P104
・公益財団法人予防接種リサーチセンター「予防接種実施者のための予防接種必携 令和5年度(2023)」P36-37
・厚生労働省ホームページ.“麻しんについて”.
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/measles/index.html
・日本ワクチン学会「ワクチン基礎から臨床まで」2018.P130
・岡部信彦.“1.麻疹ウイルス 最近の我が国における麻疹の疫学状況,今後の対策”.ウイルス.2007.第57巻 第2号.P171-P180
・一般社団法人日本ワクチン産業協会「2023予防接種に関するQ&A集」2023,p75
・(公財)予防接種リサーチセンター「予防接種と子どもの健康 2024年度版」から転載(一部改変)
・厚生労働省 予防接種健康被害救済制度について(2024/5/29閲覧)
・独立行政法人医薬品医療機器総合機構 医薬品副作用被害救済制度に関する業務 Q&A (2024/5/29閲覧)
執筆:2021年6月
最終更新:2024年9月
文責:一般財団法人阪大微生物病研究会
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