ロタウイルスワクチン

胃腸炎を引き起こすロタウイルス

ロタウイルスは感染力が強く、急性の胃腸炎を引き起こします。主な症状は水のような下痢、吐き気、おう吐、発熱、腹痛で、乳幼児期に感染すると激しい症状が出て入院が必要になることがあります。何度も感染を経験して大人になるうちに、ほとんどの場合、症状が出なくなっていきます。
 ロタウイルスは患者の便に多く含まれ、ウイルス粒子10~100個で感染するとされています。感染を広げないようにするには、おむつ交換の時に使い捨てのゴム手袋を使うなど適切な処理や手洗いの徹底が必要ですが、感染を完全に予防することは困難です。
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3~5月に乳幼児を中心に流行

 ワクチン導入前に、世界では毎年約50万人の乳幼児がロタウイルス感染症により死亡していたと報告されており、その80%以上が開発途上国の乳幼児です。
日本では例年、3~5月に乳幼児を中心に胃腸炎の流行が起こりますが、その原因の多くがロタウイルスです。子供の半数が小学校就学前にロタウイルス胃腸炎で小児科外来を受診するとされ、5歳未満の乳幼児では全国で年間2万6500~7万8000人がロタウイルス胃腸炎で入院していると推定されています。
 ただ、2020~21年はこの流行がほぼ見られませんでした。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて実施された保育施設の休園などが影響したと考えられます。

2020年10月から定期接種の対象に

これまでロタワクチンは、費用を自己負担する任意接種でしたが、2020年10月1日から、自治体が費用を負担する定期接種の対象になりました。同年8月1日以降に生まれた人が受けられます。
 日本では、2種類のロタウイルスワクチンが承認されています。いずれのワクチンも、ウイルスの毒性を弱めて病気を起こさないようにした「生ワクチン」です。注射ではなく、液体を飲む「経口ワクチン」です。2種類のワクチンの有効性は同等と考えられています。
<ロタウイルスワクチンを製造しているメーカー>
・MSD株式会社(5価ロタウイルスワクチン)
・グラクソ・スミスクライン株式会社(1価ロタウイルスワクチン) (50音順)
※「5価」とは、5種類の弱毒化したロタウイルスが含まれているという意味です。「1価」は1種類です。

生後8週~14週6日までの初回接種を推奨

 ロタウイルスワクチンは、生後6週から接種を受けることが可能です。日本小児科学会は8週から14週6日までに初回接種を受けることが推奨されています。15週以降の初回接種は安全性の観点から推奨されていません。
 接種回数や期間は種類によって異なります。1価ワクチンは24週までに2回、5価ワクチンは32週までに3回接種します。

ワクチン全般における副反応の種類と対策・対応

 ワクチンを接種した後に、腫れや痛みなどの症状がでることがあります。この好ましくない症状を「副反応」と呼びます。副反応が起こる原因の多くは、ワクチンで免疫を得るために起こしている免疫反応と考えられますが、ワクチンとの関連が不明瞭なものもあります。
ワクチンを接種後、よく見られる症状に以下のようなものがあります。
【注射した場所にみられる症状】腫れ、赤み、痛み、など
【全身の症状】発熱、だるさ、筋肉痛、頭痛、など
これらの症状は自然に治る軽い症状であることがほとんどですが、症状が重い場合にはかかりつけ医に相談してください。
一方で、まれに以下のような重い副反応が起こることもあります。 
おう吐、じんましん、失神、アナフィラキシー、けいれん、など。
また、4種混合ワクチンと3種混合ワクチンを接種した場合には、接種した部分を中心に強い赤みと腫れの症状がみられることがあります。
 これらの症状が出た場合は、医師による適切な処置が必要です。万が一、重い副反応が現れた場合に迅速に対応できるよう、ワクチンを接種した後はその場でしばらく様子を見ること、帰宅後もすぐに医師と連絡をとれるようにしておくことが必要です。
 ワクチン接種によって重い症状などが出た場合は、救済制度があります。申請方法については、かかりつけ医やお住まいの市町村にご相談ください。
 ワクチンを接種した後に重い症状が出た場合は、その原因がわからなくても「副反応の疑い例」として、厚生労働省に報告し集約され、今までわかっていなかった副反応を発見することにも役立てられます。気になる症状があれば、かかりつけ医に報告・相談するようにして下さい。

海外ではワクチンの導入後、劇的に患者が減少

 先進国、途上国を問わず、ワクチン導入後にロタウイルス感染症は劇的に減少しています。直接の効果だけでなく、多くの人が免疫を持つことで社会全体での流行を抑えることが出来る集団免疫効果も認められています。
 2種類のワクチンの研究結果を総合すると、高所得国では約90%、低所得国では約50%、その中間に属する国では約70%、発症リスクを低下させることが分かっています。

参考文献
* 厚生労働省ホームページ.“ロタウイルスに関するQ&A”.
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/Rotavirus/index.html
* 一般社団法人日本ワクチン産業協会「2020予防接種に関するQ&A集」.2020. P112-114
* 国立感染症研究所ホームページ  感染症週報2021年第33週https://www.niid.go.jp/niid/images/idwr/pdf/latest.pdf
* 厚生労働省ホームページ ロタウイルスワクチンに関するQ&A  https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/index_00001.html
* 公益財団法人予防接種リサーチセンター「予防接種実施者のための予防接種必携2019」2019.P100
* 第32回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会ロタウイルスワクチンについて(予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会からの報告)P2https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000535716.pdf
* 日本ワクチン学会「ワクチン基礎から臨床まで」2018.P40
* 日本小児科学会「日本小児科学会の「知っておきたいワクチン情報」予防接種の副反応と有害事象」2018.参考 2021.04 

執筆:2021年9月
文責:一般財団法人阪大微生物病研究会

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