ロタウイルス感染症
乳幼児の急性下痢症の原因として最も多い感染症
乳幼児の急性下痢症の原因として最も多い感染症で、世界で年間約20万人の小児(5歳未満)が亡くなっているとされます。感染力が強く、衛生状態の良い先進国でも5歳までにほぼすべての小児がロタウイルスに感染するといわれています。5歳以降も繰り返し感染しますが、次第に症状が出なくなり、大人は軽症ですんだり発症しなくなったりします。日本の患者数は年間80万人くらいで、うち15~43人に1人が入院していると推測されています。
症状:はげしい嘔吐や下痢が特徴
潜伏期間は1~3日。激しいおう吐や下痢、発熱がみられます。便が白色になることもあります。
感染経路:糞口感染により感染します
感染者の大便と一緒に排出されたウイルスが、口に入って感染します(糞口感染)。ロタウイルスは膜を持たないノンエンベロープウイルスで、アルコールや熱に対してやや抵抗性が高いため、次亜塩素酸やノンエンベロープウイルスにも効果のある酸性アルコール消毒剤で消毒する必要があります。
病原体:レオウイルス科のRNAウイルス
ロタウイルスは、レオウイルス科に分類されるRNAウイルスで、直径約100ナノメートル(1ミリメートルの1万分の1)ほどの大きさです。ロタとはラテン語で車輪のことで、電子顕微鏡で見ると車輪のような形をしています。
治療法・予防:まだ抗ウイルス薬は開発されていません
ロタウイルスに対する抗ウイルス薬はなく、脱水症を防ぐために水分・電解質を補給することが基本的な対処法です。脱水症状がひどい場合には、病院で点滴を行うなどの治療や入院が必要となる場合があります。ワクチンは2回接種ワクチンと3回接種ワクチンの2種類の弱毒生ワクチンが承認され、定期接種に使用されています。接種回数は異なりますが、どちらのワクチンも同様の効果があるとされています。通常、小児科でワクチン接種予約時にどちらを接種するか選択できます。
執筆:2021年9月
文責:大阪大学微生物病研究所
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