肺炎球菌ワクチン(小児・成人)

免疫の低下で症状を引き起こす肺炎球菌

肺炎球菌は、乳幼児の鼻や喉で見つかることが多い細菌です。せきやくしゃみで他の人にうつります。菌を持っていてもすぐに病気になるわけではありませんが、免疫の働きが低下していると、肺炎や気管支炎、中耳炎、敗血症、髄膜炎などを引き起こします。
 厚生労働省によると、2019年の日本人の死因の第5位が肺炎。その原因菌の1/4~1/3を占めるのが肺炎球菌です。
※病気の詳細はこちら

小児と65歳以上の高齢者に定期接種

肺炎球菌の感染で重症化のリスクが高い子どもと高齢者を対象に、市町村が費用を負担する「定期接種」が行われています。子どもの定期接種は2013年、高齢者の定期接種は2014年に始まりました。
 子どもの定期接種は、生後2カ月〜5歳未満の間に、計4回受けることができます。
 高齢者の定期接種は65歳、または60~64歳で心臓や腎臓、呼吸器、免疫(ヒト免疫不全ウイルスによる)の機能に障害がある方が対象です。また制度施行時の経過措置として、2024年3月31日までの間に70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳になる方も、その年齢になる年度に定期接種を受けられます。

小児用、高齢者用の定期接種ワクチンは異なる

肺炎球菌の定期接種で使われるワクチンは、子ども用の13価肺炎球菌ワクチンおよび15価肺炎球菌ワクチンと、高齢者用の23価肺炎球菌ワクチンの3種類があります。肺炎球菌には90以上の種類があり、このうち13種類の成分を含むものが13価、15種類の成分を含むものが15価、23種類の成分を含むものが23価です。
13価肺炎球菌ワクチンおよび15価肺炎球菌ワクチンは高齢者でも使用できますが、その場合は自分で費用を負担する「任意接種」となります。
肺炎球菌ワクチンは、いずれもウイルスの感染性をなくした「不活化ワクチン」です。

<肺炎球菌ワクチンを製造しているメーカー>
・MSD株式会社(23価肺炎球菌ワクチン、15価肺炎球菌ワクチン)
・ファイザー株式会社(13価肺炎球菌ワクチン) (50音順)

ワクチン導入後、子どもの重篤例が54%減

 肺炎球菌に感染して現れる症状は多岐にわたりますが、血液や髄液など本来無菌でないといけない部分から菌が検出される症状を、侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)といい、特に問題とされています。
 日本で行われた調査では、5歳未満のIPD発生率が、ワクチン導入前と後で54%減少したという報告があります。

ワクチン全般における副反応の種類と対策・対応

 ワクチンを接種した後に、腫れや痛みなどの症状がでることがあります。この好ましくない症状を「副反応」と呼びます。副反応が起こる原因の多くは、ワクチンで免疫を得るために起こしている免疫反応と考えられますが、ワクチンとの関連が不明瞭なものもあります。
ワクチンを接種後、よく見られる症状に以下のようなものがあります。
【注射した場所にみられる症状】はれ、赤み、痛み、など
【全身の症状】発熱、だるさ、筋肉痛、頭痛、など
これらの症状は自然に治る軽い症状であることがほとんどですが、症状が重い場合にはかかりつけ医に相談してください。
一方で、まれに以下のような重い副反応が起こることもあります。 
おう吐、じんましん、失神、アナフィラキシー、けいれん、など。
 これらの症状が出た場合は、医師による適切な処置が必要です。万が一、重い副反応が現れた場合に迅速に対応できるよう、ワクチンを接種した後はその場でしばらく様子を見ること、帰宅後もすぐに医師と連絡をとれるようにしておくことが必要です。
 ワクチン接種によって重い症状などが出た場合は、救済制度があります。申請方法については、かかりつけ医やお住まいの市町村にご相談ください。
 ワクチンを接種した後に重い症状が出た場合は、その原因がわからなくても「副反応の疑い例」として、厚生労働省に報告し集約され、今までわかっていなかった副反応を発見することにも役立てられます。気になる症状があれば、かかりつけ医に報告・相談するようにして下さい。

参考文献
* 厚生労働省「令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概況 p.10)」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai19/dl/gaikyouR1.pdf
* 厚生労働省ホームページ“肺炎球菌感染症(高齢者)”
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/haienkyukin/index_1.html
* 厚生労働省ホームページ“肺炎球菌感染症(小児)”
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/pneumococcus/index.html
* 一般社団法人日本ワクチン産業協会「2020予防接種に関するQ&A集」.2020. P76
* 中込治 神谷茂 錫谷達夫「標準微生物学 第13版」.医学書院.2018.P129
* 日本ワクチン学会「クチン基礎から臨床まで」.2018.P40
* 日本小児科学会「日本小児科学会の「知っておきたいワクチン情報」予防接種の副反応と有害事象」2018.参考 2021.04 
* 厚生労働省リーフレット「高齢者を対象にした肺炎球菌ワクチンの定期接種を実施しています」https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/202104201412158914.pdf

執筆:2021年9月
最終更新:2024年4月
文責:一般財団法人阪大微生物病研究会

感染症

  1. トップトップ
  2. 肺炎球菌ワクチン(小児・成人)