肺炎球菌感染症

健康な成人の肺炎の中で最も多い

 肺炎球菌は、その名の通り主に肺炎を引き起こす細菌です。一般に、5~20%の人は喉や気道にこの菌を持ち、健康な成人に肺炎を起こす原因のトップとされています。菌を持っている人の免疫力が何らかの理由で低下したり、低月齢の赤ちゃんや高齢者など免疫力の低い人が感染したりすると、肺炎や中耳炎、敗血症、髄膜炎などを発症します。

症状:肺炎が多く、重症化することも

 肺炎球菌は肺に感染して肺炎を起こします。特に、インフルエンザなどで免疫力が落ちた時に起こる肺炎は、この肺炎球菌が原因であることが多いと言われています。肺炎以外にも、中耳炎や、より症状が重い敗血症、髄膜炎を引き起こします。特に髄膜炎を発症した場合はは命に関わることもあり、また、治癒しても重い後遺症が残る可能性もあります。

病原体:莢膜(きょうまく)という強固なバリアで自らを守る

 肺炎球菌は2個の菌が連なった球状の形をしていて、かつては肺炎双球菌とも呼ばれました。莢膜という糖類でできたバリアで自らを覆い、白血球に捕まるのを防いでいます。この莢膜の表面にある糖類の種類により肺炎球菌は90種類以上もの型に分類されます。日本で現在、定期接種に使用されているワクチンは、このうち主要な13種類(小児用)あるいは23種類(成人用)の型に対するワクチンです。

感染経路:せきやくしゃみなどで菌が広がる

せきやくしゃみなどで肺炎球菌が飛び散り、他の人に広がっていきます。生まれたばかりの赤ちゃんはこの菌を持っていませんが、集団生活が始まると、友達と遊ぶことなどによって広がってしまうことが多くあります。大人の肺炎球菌感染症は、乳幼児から菌をもらって起こる場合が多いと考えられています。

治療法:ペニシリン系の抗菌薬が使用されるが耐性菌が問題

抗生物質のペニシリンなどが第一選択として用いられます。しかし、ペニシリンが効きにくいペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)というものもあり、対策が課題になっています。肺炎球菌にとどまらず、薬剤耐性菌の出現や増加は重要な問題です。

執筆:2021年9月
文責:大阪大学微生物病研究所

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