インフルエンザワクチン

インフルエンザは、どんな病気?

 インフルエンザは、インフルエンザウイルスが原因の感染症です。のどの痛み、鼻汁、咳など普通の風邪に似た症状に加え、38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感等の症状が比較的急速に現れるのが特徴です。子どもではまれに急性脳症を、高齢者の方や免疫力の低下している方では肺炎を併発する等、重症になることがあり、一般的な風邪とは分けて考えるべき「重くなりやすい疾患」です。
インフルエンザは、毎年、世界各国で流行がみられ、日本では、例年12月~3月が流行シーズンです。

高齢者の接種は、市町村が費用を助成

 高齢者の方(65歳以上)や、60~64 歳で特定の病気をお持ちの方は、インフルエンザにかかると肺炎などの重い症状を起こしやすいため、市町村が費用を負担する「定期接種」の対象となります。実施期間などは自治体によって異なるので、お住まいの市町村などにお問い合わせください。
<定期接種の対象>
・65歳以上の方
・60~64歳で、心臓や腎臓、呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活を極度に制限される方
・60~64歳で、ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方
 それ以外の方は、自分で費用を負担する「任意接種」となります。
 また、学校や職場などでのインフルエンザ流行を防ぐために、幅広い方々がインフルエンザワクチンを接種することが望ましいとされています。
 子どもは生後6カ月から接種できます。13歳未満は2回の接種、13歳以上は通常1回接種とされています。慢性的な病気のある場合などは、医師との相談で2回接種も検討されます。

毎年、流行を予測して作るワクチン

 インフルエンザウイルスは小さい変異を頻繁に起こし、流行する種類は毎年のように変わっていきます。このためワクチンは、次の冬の流行を予測して作られます。現在、日本で広く使われているワクチンは、1本で4種類のインフルエンザウイルスに対する予防効果があります。
 ウイルスの流行は変わるため、毎年、接種する必要があります。
<インフルエンザワクチンを製造しているメーカー>
・KMバイオロジクス株式会社
・第一三共株式会社
・デンカ株式会社
・一般財団法人阪大微生物病研究会 (50音順)

どのくらい効くの?

 ワクチンを接種しても感染を完全に防ぐことはできませんが、発症や重症化、合併症を一定程度予防する効果があります。
ワクチンの有効性は、ワクチンを接種した場合に、接種しなかった人と比べてどのくらいリスクが減少したか、という数字で示されます。例えば有効率が60%のワクチンならば、そのワクチンを接種すれば接種しなかった人と比べて発病のリスクが60%減少したことを意味します。言い換えると、ワクチンを接種せずに発病した人が10人いたとすると、ワクチンを接種していれば60%に当たる6人は発病を防げたということになります。
 インフルエンザワクチンの有効性は、以下の報告があります。
・6歳未満の子どもでは、発症を防ぐ有効率は60%
・65歳以上の高齢者福祉施設に入所している高齢者では、発症を防ぐ有効率は34~55%、死亡を防ぐ効果は82%

ワクチン全般における副反応の種類と対策・対応

 ワクチンを接種した後に、腫れや痛みなどの症状がでることがあります。この好ましくない症状を「副反応」と呼びます。副反応が起こる原因の多くは、ワクチンで免疫を得るために起こしている免疫反応と考えられますが、ワクチンとの関連が不明瞭なものもあります。
ワクチンを接種後、よく見られる症状に以下のようなものがあります。
【注射した場所にみられる症状】腫れ、赤み、痛み、など
【全身の症状】発熱、だるさ、筋肉痛、頭痛、など
これらの症状は自然に治る軽い症状であることがほとんどですが、症状が重い場合にはかかりつけ医に相談してください。
一方で、まれに以下のような重い副反応が起こることもあります。 
おう吐、じんましん、失神、アナフィラキシー、けいれん、など。
 これらの症状が出た場合は、医師による適切な処置が必要です。万が一、重い副反応が現れた場合に迅速に対応できるよう、ワクチンを接種した後はその場でしばらく様子を見ること、帰宅後もすぐに医師と連絡をとれるようにしておくことが必要です。
 ワクチン接種によって重い症状などが出た場合は、救済制度があります。申請方法については、かかりつけ医やお住まいの市町村にご相談ください。
 ワクチンを接種した後に重い症状が出た場合は、その原因がわからなくても「副反応の疑い例」として、厚生労働省に報告し集約され、今までわかっていなかった副反応を発見することにも役立てられます。気になる症状があれば、かかりつけ医に報告・相談するようにして下さい。

インフルエンザワクチンはニワトリの卵から作られる

 現在、日本で使われているインフルエンザワクチンはウイルスの感染性をなくした「不活化ワクチン」と呼ばれるタイプ。ニワトリの卵の中でインフルエンザウイルスを増やし、薬品で処理をして感染する能力を無くしています。
 ワクチンを作る際に精製をしていますが、ごく微量の卵の成分が残り、まれにアレルギー症状を起こすことがあります。卵にアレルギーがある人は、医師に相談してください。

猛威をふるったスペイン風邪は、実はインフルエンザ

 インフルエンザの世界的な流行としては、1918年の「スペイン風邪」(スペインインフルエンザ)が有名です。全世界で6億人がかかり、死者は2000~4000 万人に上ったと推定されています。当時の日本は大正時代で、約2300 万人がかかり、死者は38万人に及んだとされています。
 現在の日本では、2018年度の1年間にインフルエンザにかかった人は約190万人、死者約3300人と報告されています。

参考文献
* 一般社団法人日本ワクチン産業協会「2020予防接種に関するQ&A集」.2020.Q13 P276
* 一般社団法人日本ワクチン産業協会「2020ワクチンの基礎 ワクチン類の製造から流通まで」.2020、P103
* 公益財団法人予防接種リサーチセンター「予防接種ガイドライン2020年度版」.2020.P85
* 厚生労働省ホームページ.インフルエンザQ&A  https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html
* 国立感染症研究所ホームページ.“インフルエンザとは”. https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/a/echinococcus/392-encyclopedia/219-about-flu.html
* 国立感染症研究所ホームページ.“感染症情報センター 疾患別情報 インフルエンザ 総説”. http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/intro.html
* 竹下望.「あなたも名医!エキスパートたちが教える!ワクチン〈総整理〉」(あなたも名医!Jmed68).日本医事新報社.2020、P133-134.
* 日本ワクチン学会「ワクチン基礎から臨床まで」.2018.P40
* 日本小児科学会「日本小児科学会の「知っておきたいワクチン情報」予防接種の副反応と有害事象」.2018.参考 2021.04 

執筆:2021年6月
文責:一般財団法人阪大微生物病研究会

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