インフルエンザ

インフルエンザウイルスによる感染症で、日本では冬から春先にかけて流行します。

いわゆる「かぜ」と呼ばれる「風邪症候群」に比べてウイルスの感染力が強く、せきなどの呼吸器症状より前に発熱などの全身症状が急速にあらわれることが特徴です。小児や高齢者では合併症により死亡することもあります。

<インフルエンザとかぜの症状の違い>

症状:

1〜2日の潜伏期のあと、突然の発熱をもって発症し、頭痛、筋肉痛、関節痛などの全身の症状がともないます。慢性呼吸器疾患や心不全の基礎疾患を持つ人や、高齢者や乳幼児では肺炎などの合併症を起こすことがあります。また、特に乳幼児でインフルエンザ脳症の合併も多く見られます。

感染経路:

感染している人のくしゃみやせきででるしぶきを吸い込むことによる飛まつ感染、また、そのしぶきが手などに付着することによる接触感染により感染します。
ただし、ウイルスが手に付着しただけで感染することはありません。ウイルスがついた手で口・鼻・目などの粘膜を触れることで感染します。そのため、こまめな手洗いは接触感染のリスクを減らします。

病原体:

インフルエンザウイルスは、RNAをゲノムにもつRNAウイルスで、A型、B型、C型、D型に分かれます。そのうち季節性インフルエンザの流行を起こすのは、A型とB型のインフルエンザウイルスです。これらA型とB型のインフルエンザウイルスの表面には、ヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)という突起状のタンパク質が存在します。B型はHAもNAも1種類ですが、A型では18種類のHA亜型と、11種類のNA亜型が知られています。

季節性インフルエンザを起こすインフルエンザウイルス

※混同しやすい病原体にインフルエンザ菌(HIB)があります。
インフルエンザ菌はウイルスではなく細菌で、主に小児や高齢者に肺炎を起こします。
インフルエンザウイルスとは異なる病原体です。

治療、予防:

抗インフルエンザ薬:ウイルスの増殖過程をターゲットにした薬が開発されています。

ワクチンは、インフルエンザウイルスA型株2種類とB型株2種類の合わせて4種類のHAを主成分とする不活化ワクチンが国内で広く用いられています。
国立感染症研究所HPには、「感染や発症そのものを完全に防御することはできないが、重症化や合併症の発症を予防する効果は証明されている」と記載されています。
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/219-about-flu.html

新型インフルエンザとは?

A型インフルエンザウイルスは本来トリが保有するウイルスですが、変異によりヒトやブタ同士の間で感染する株が生まれると考えられています。

変異したウイルス株は、ときにヒト株がブタに感染する、トリ株がブタに感染するなど種を超えて感染することがあります。これらのウイルスが、複数のウイルスの遺伝子が組み換わる「遺伝子再集合」などの変異により新たなウイルスを生みだします。生まれた新たなウイルス株がヒトからヒトへの感染性をもつ場合、新型インフルエンザとして大流行します。

新型インフルエンザの流行が世界に広がり、多くの人々がウイルスに対する免疫を獲得するようになると、新型インフルエンザは、季節性インフルエンザへと移行し、季節的な流行を繰り返すようになります。2009年に流行した新型インフルエンザは、2010~2011年のシーズンには他の季節性インフルエンザとの大きな違いはなくなり、厚生労働省は2011年3月、「今後は通常の季節性インフルエンザとして扱う」と発表しました。

執筆:2021年10月
文責:大阪大学微生物病研究所

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