百日せきワクチン

乳児は重症化の恐れがある「百日咳」

感染力の高い百日咳菌が原因で、激しい咳が出る病気です。乳児、特に生後6カ月未満の子供は、かかると命に関わる危険があります。
日本で百日せきワクチンが導入される前は、患者数は10万人を超え、約10%が死亡していました。1950年から予防接種法によりワクチン接種が行われるようになると、普及とともに患者数は激減しました。しかし、現在でも日本を含む世界各国で流行が発生しています。
また、百日咳は、ワクチンで得られた免疫が小学校入学前には少なくなってきていて、百日咳の患者の多くが小学生であることが分かってきました。このため、小学校入学前や11~12歳での3種混合ワクチン接種を日本小児科学会が推奨しています。この場合、任意接種となります。
※病気の名前は「百日咳」ですが、ワクチン名は「百日せきワクチン」と「咳」をひらがなにするのが正式な表記方法です。
※病気の詳細はこちら

早めにワクチン接種を

百日咳はワクチンによる予防が重要です。市町村が費用を負担する「定期接種」として、生後2~90カ月未満に計4回接種できます。
百日咳は母子免疫※の効果が十分ではないため、生後2カ月になったらできるだけ早く接種することが望ましいとされています。
※母子免疫(移行抗体とも):母親が持っている免疫(抗体)がへその緒などを通じて赤ちゃんに移ること。生まれてから数カ月間、赤ちゃんの体を感染症から守る働きがあります。

ワクチンの効果は80%以上

国内の定期接種では、一般的に「4種混合ワクチン」が使われますが、「3種混合ワクチン」を選択することも可能です。2024年4月から、「5種混合ワクチン」も定期接種として使用開始されました。いずれも百日咳のワクチンを含んでいます。
ワクチン接種により、百日咳の罹患(りかん)リスクを80~85%程度減らすことが出来ると報告されています。

<5種混合ワクチン、4種混合ワクチンを製造しているメーカー>
・KMバイオロジクス株式会社
・一般財団法人阪大微生物病研究会

<3種混合ワクチンを製造しているメーカー>
・一般財団法人阪大微生物病研究会 (50音順)

ワクチン全般における副反応の種類と対策・対応

ワクチンを接種して期待される免疫効果と同時に、接種箇所の赤み、はれ、痛み等の望ましくない局所反応や発熱、リンパ節腫脹等の全身反応を惹起することが多く、これらは“副反応”と呼ばれています。
ワクチンの種類によっても異なりますが、発熱、接種箇所の赤み、はれ、しこり、発疹などが比較的高い頻度(数%から数十%)で認められます。通常、数日以内に自然に治るので心配の必要はありません。ただし、接種箇所のひどいはれ、高熱、ひきつけなどの症状がある場合は、医師の診察を受けてください。
ワクチンの種類によっては、極めてまれ(百万から数百万人に1人程度)に脳炎や神経障害などの重い副反応が生じることがあります。このような場合、健康被害を受けた本人やその家族が救済の請求を行うことで、審査が行われ、認定されたときは給付の対象となります。定期接種の場合は、予防接種法に基づく健康被害救済の対象となるため、救済の請求は、予防接種を受けたときに住民票を登録していた市区町村に対して行います。一方、任意接種の場合は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法に基づく救済の対象となるため、救済の請求は独立行政法人医薬品医療機器総合機構に対して行います。
ワクチンを接種した後はその場でしばらく様子を見ること、帰宅後もすぐに医師と連絡をとれるようにしておくことが必要です。

参考文献
・国立感染症研究所ホームページ“百日咳とは”
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/477-pertussis.html
・厚生労働省ホームページ“百日せき”
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/whooping_cough/index.html
・一般社団法人日本ワクチン産業協会「2020予防接種に関するQ&A集」.2020. P128
・国立感染症研究所「百日せきワクチンファクトシート平成29(2017)年2月10日」.2017 
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000184910.pdf
・一般社団法人日本ワクチン産業協会「2023予防接種に関するQ&A集」
・(公財)予防接種リサーチセンター「予防接種と子どもの健康 2024年度版」から転載(一部改変)
・厚生労働省 予防接種健康被害救済制度について(2024/5/29閲覧)
・独立行政法人医薬品医療機器総合機構 医薬品副作用被害救済制度に関する業務 Q&A (2024/5/29閲覧)

執筆:2021年6月
最終更新:2024年7月
文責:一般財団法人阪大微生物病研究会

感染症

  1. トップトップ
  2. 百日せきワクチン