破傷風ワクチン

命に関わる病気「破傷風」

破傷風菌が傷口などから入り込み、神経に働く毒素を出してけいれんなどを引き起こします。多くの場合、呼吸をするための筋肉や喉がけいれんし、人工呼吸器が必要になります。発症すると死亡率は30~50%になるとされ、命に関わります。
特に新生児の死亡率が約80%と高く、1988年には世界で約78万7000人の新生児が死亡したと推定されています。その後、ワクチン接種や衛生的な出産などが進められ、多くの国で死者数が激減しました。
破傷風菌はヒトからヒトへは感染しませんが、土などに含まれます。日本では現在、年間約100人が破傷風を発病し、うち5~9人が亡くなっています。予防にはワクチンが有効です。
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生後2カ月~12歳に5回接種

ワクチンは、市町村が費用を負担する「定期接種」で、生後2カ月~12歳に計5回、接種します。
一般的には、5種混合ワクチンを生後2カ月~7カ月未満で接種開始し20~56日の間隔をおいて3回接種し、その6カ月~18カ月後に4回目を接種します。4種混合ワクチンを接種する場合は、生後2カ月~12カ月の期間に3回、その12カ月~18カ月後に4回目を接種します。最後に2種混合ワクチンを11歳~12歳の期間で1回接種します。また、大人がけがをした場合、子どもの頃に予防接種で獲得した免疫が弱まっている可能性があるため、破傷風を予防するために医師の判断でワクチンを接種することがあります。
継続的に免疫を保持するためには、約10年ごとの追加接種を行うことが望ましいとされています。

3回のワクチン接種でほぼ100%の人に免疫

3回のワクチン接種でほぼ100%の人が十分な免疫を獲得すると報告されています。

ワクチン全般における副反応の種類と対策・対応

ワクチンを接種して期待される免疫効果と同時に、接種箇所の赤み、はれ、痛み等の望ましくない局所反応や発熱、リンパ節腫脹等の全身反応を惹起することが多く、これらは“副反応”と呼ばれています。
ワクチンの種類によっても異なりますが、発熱、接種箇所の赤み、はれ、しこり、発疹などが比較的高い頻度(数%から数十%)で認められます。通常、数日以内に自然に治るので心配の必要はありません。ただし、接種箇所のひどいはれ、高熱、ひきつけなどの症状がある場合は、医師の診察を受けてください。
ワクチンの種類によっては、極めてまれ(百万から数百万人に1人程度)に脳炎や神経障害などの重い副反応が生じることがあります。このような場合、健康被害を受けた本人やその家族が救済の請求を行うことで、審査が行われ、認定されたときは給付の対象となります。定期接種の場合は、予防接種法に基づく健康被害救済の対象となるため、救済の請求は、予防接種を受けたときに住民票を登録していた市区町村に対して行います。一方、任意接種の場合は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法に基づく救済の対象となるため、救済の請求は独立行政法人医薬品医療機器総合機構に対して行います。
ワクチンを接種した後はその場でしばらく様子を見ること、帰宅後もすぐに医師と連絡をとれるようにしておくことが必要です。

トキソイドというタイプのワクチン

破傷風のワクチンはトキソイドと呼ばれるタイプで、破傷風菌が生み出す毒素を無毒化したものです。国内の定期接種で使われる「4種混合ワクチン」「3種混合ワクチン」「2種混合ワクチン」はそれぞれ下記の病気のワクチンが混合されていて、いずれも破傷風トキソイドを含んでいます。2024年4月から、新たに「5種混合ワクチン」が定期接種に加わりました。また、他の種類のワクチンを含まない「単抗原ワクチン」もあり、任意接種や破傷風の治療で使われます。

<5種混合ワクチン>
・ジフテリア
・百日せき
・破傷風
・ポリオ
・インフルエンザ菌b型(Hib)による感染症

<4種混合ワクチン>
・ジフテリア
・百日せき
・破傷
・ポリオ

<3種混合ワクチン>
・ジフテリア
・百日咳
・破傷風

<2種混合ワクチン>
・ジフテリア
・破傷風

<5種混合ワクチン、4種混合ワクチンを製造しているメーカー>
・KMバイオロジクス株式会社
・一般財団法人阪大微生物病研究会 (50音順)

<3種混合ワクチン、2種混合ワクチンを製造しているメーカー>
・一般財団法人阪大微生物病研究会

<単抗原ワクチンを製造しているメーカー>
・デンカ株式会社
・一般財団法人阪大微生物病研究会(50音順)

参考文献
・国立感染症研究所ホームページ“破傷風とは”
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/466-tetanis-info.html
・竹下望.「あなたも名医!エキスパートたちが教える!ワクチン〈総整理〉」(あなたも名医!Jmed68).日本医事新報社.2020.P98
・一般社団法人日本ワクチン産業協会「2023予防接種に関するQ&A集」2023.p75
・(公財)予防接種リサーチセンター「予防接種と子どもの健康 2024年度版」から転載(一部改変)
・厚生労働省 予防接種健康被害救済制度について(2024/5/29閲覧)
・独立行政法人医薬品医療機器総合機構 医薬品副作用被害救済制度に関する業務 Q&A (2024/5/29閲覧)

執筆:2021年6月
最終更新:2024年9月
文責:一般財団法人阪大微生物病研究会

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