破傷風

死亡率が高い感染症

 破傷風菌が原因の病気です。破傷風菌がつくる毒素で強いけいれんが起きます。破傷風患者の約半数が新生児で、死亡率も新生児は約80%、新生児でない場合でも約40%と非常に高いことが知られています。日本では1995年以降、新生児破傷風による死亡例は報告されていませんが、世界では新生児の主な死亡原因の一つとなっています。

症状:筋肉のけいれん

 破傷風菌が感染して毒素を出し、毒素が神経に取り込まれると、筋肉がけいれんして硬くなり、動かせなくなります。毒素が、神経の興奮を抑えられないようにしてしまうためです。
 また、破傷風菌は、赤血球や白血球を壊す別の毒素(溶血毒素・テタノリジン)も作りますが、症状にどう関わるかは分かっていません。

感染経路:傷口から感染。ヒトからヒトへは感染せず

破傷風菌は、固い殻に包まれた状態(芽胞(がほう))で土などに含まれ、傷口から侵入して増殖します。
現在でも、転んだり、土いじりをしたりしたときに感染する例が多くなっています。傷口をよく洗うなど適切な処置をすれば感染の可能性は低くなります。
咳などの飛沫によって感染するインフルエンザウイルスや百日咳菌などとは異なり、ヒトからヒトには感染しません。

病原体:破傷風菌は土の中で何年も生き延びる

 破傷風菌は、棒のような形をしています。酸素があると増殖できず、熱や乾燥に強い「芽胞(がほう)」という休眠状態で、土の中で何年も生き延びます。この芽胞が傷口に入り、酸素のないところで増殖します。

治療・予防:抗菌薬や抗体で治療

治療は、感染が疑われる傷口の十分な洗浄や、抗菌薬(メトロニダゾールなど)の投与が行われます。菌が死んでも毒素は残るため、毒素を中和する抗体を投与します。ワクチン接種から10年以上たっている場合は、破傷風ワクチンを接種します。
また、呼吸をするための筋肉がけいれんした場合は、気管の切開と人工呼吸を行います。さらに、筋肉のけいれんや硬直を抑えるため、ジアゼパムやミダゾラムなどの鎮静薬が投与されることがあります。
現在定期接種として採用されている4種混合ワクチンの一つが破傷風に対するワクチンです。

執筆:2021年9月
文責:大阪大学微生物病研究所

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