水痘ワクチン・帯状疱疹(ほうしん)ワクチン
発疹が出る水痘は、重症化すると死亡例も
水痘(すいとう)は「水ぼうそう」とも呼ばれ、かゆみのある発疹が頭皮や体幹、手足に出ます。発疹は赤い状態から、内部に液体を含んだ状態、かさぶた、へと変化して治っていきます。熱が出る場合もあります。
主に子供がかかりますが、成人が発症すると重症化するリスクが高く、肺炎や脳炎などの合併症の危険もあります。死亡例もあります。
水痘・帯状疱疹ウイルスが原因です。
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潜んでいたウイルスが帯状疱疹を起こす
小児によくみられる水痘と、高齢者によくみられる帯状疱疹(ほうしん)は、実は同じウイルスが原因です。水痘が治っても、原因となった水痘・帯状疱疹ウイルスは神経節と呼ばれる部分に潜んでいます。普段は免疫によって抑えられていますが、加齢や疲労、ストレスなどをきっかけに免疫が低下するとウイルスは再び活動し、神経に沿って帯状に痛みや発疹が現れます。50歳をこえると発症しやすくなるとされています。
水痘ワクチンは1~3歳に計2回接種
水痘・帯状疱疹ウイルスは、空気感染や接触感染で広がります。感染力が強く、ワクチンを受けなければ10歳までに約80%の子どもが水痘にかかるとされます。予防のため、市町村が費用を負担する「定期接種」で、水痘ワクチンを生後12~36カ月に計2回接種します。期間外に接種する場合は、自分で費用を負担する「任意接種」となります。
ワクチン接種で中~重症の症状を95%以上予防
水痘ワクチンは、中~重症の水痘を95~100%の確率で予防し、軽症であっても80~85%の確率で予防することが報告されています。
日本での水痘ワクチンの定期接種は2014年に始まりました。翌2015年以降、水痘にかかる患者は明らかに減少し、2021年の患者数は、2000~2013年の平均と比べて9割以上減っています。
日本で開発された水痘ワクチンが世界に
水痘ワクチンは、ウイルスを弱めて病気を起こさないようにした「生ワクチン」です。1974年に世界に先駆け日本で開発されました。この水痘ワクチン株(岡株)は1985年、世界保健機関(WHO)によって、弱毒生水痘ワクチンの製造に適した株であると認められ、現在も世界各国で使われています。
帯状疱疹ワクチンは50歳以上が対象
帯状疱疹ワクチンの接種対象年齢は主に50歳以上です。費用を自分で負担する「任意接種」ですが、接種費用の助成を行っている自治体もあるので、お住まいの地域をご確認ください。
帯状疱疹ワクチンには、ウイルスの感染性をなくした「不活化ワクチン」と、ウイルスを弱めて病気を起こさないようにした「生ワクチン」の2種類があります。
このうち「生ワクチン」は、小児の水痘予防に使用される水痘ワクチンと同じものです。
<水痘・帯状疱疹生ワクチンを製造しているメーカー>
・一般財団法人阪大微生物病研究会
<不活化組み換え帯状疱疹ワクチンを製造しているメーカー>
・グラクソ・スミスクライン株式会社
ワクチン全般における副反応の種類と対策・対応
ワクチンを接種して期待される免疫効果と同時に、接種箇所の赤み、はれ、痛み等の望ましくない局所反応や発熱、リンパ節腫脹等の全身反応を惹起することが多く、これらは“副反応”と呼ばれています。
ワクチンの種類によっても異なりますが、発熱、接種箇所の赤み、はれ、しこり、発疹などが比較的高い頻度(数%から数十%)で認められます。通常、数日以内に自然に治るので心配の必要はありません。ただし、接種箇所のひどいはれ、高熱、ひきつけなどの症状がある場合は、医師の診察を受けてください。
ワクチンの種類によっては、極めてまれ(百万から数百万人に1人程度)に脳炎や神経障害などの重い副反応が生じることがあります。このような場合、健康被害を受けた本人やその家族が救済の請求を行うことで、審査が行われ、認定されたときは給付の対象となります。定期接種の場合は、予防接種法に基づく健康被害救済の対象となるため、救済の請求は、予防接種を受けたときに住民票を登録していた市区町村に対して行います。一方、任意接種の場合は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法に基づく救済の対象となるため、救済の請求は独立行政法人医薬品医療機器総合機構に対して行います。
ワクチンを接種した後はその場でしばらく様子を見ること、帰宅後もすぐに医師と連絡をとれるようにしておくことが必要です。
参考文献
・厚生労働省ホームページ“水痘”
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/varicella/index.html
・国立感染症研究所ホームページ“水痘とは
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/418-varicella-intro.html
・国立感染症研究所「帯状疱疹ワクチンファクトシート第2版 令和6(2024)年6月20日改訂」.2024.
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001266215.pdf
・国立感染症研究所「水痘ワクチンに関するファクトシート(平成22年7月7日版)」.2010
https://www.mhlw.go.jp/stf2/shingi2/2r9852000000bx23-att/2r9852000000bxqx.pdf
・公益財団法人予防接種リサーチセンター「予防接種実施者のための予防接種必携 令和5年度(2023)」P89
・一般社団法人日本ワクチン産業協会「2023ワクチンの基礎 ワクチン類の製造から流通まで」2023.p106-107
・一般社団法人日本ワクチン産業協会「2023予防接種に関するQ&A集」p75、p210-213
・(公財)予防接種リサーチセンター「予防接種と子どもの健康 2024年度版」から転載(一部改変)
・厚生労働省 予防接種健康被害救済制度について(2024/5/29閲覧)
・独立行政法人医薬品医療機器総合機構 医薬品副作用被害救済制度に関する業務 Q&A (2024/5/29閲覧)
執筆:2021年6月
最終更新:2024年9月
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