水痘(水ぼうそう)と帯状疱疹
水ぼうそうと帯状疱疹は同じウイルスが原因
ヘルペスウイルスの一つである水痘-帯状疱疹(ほうしん)ウイルス(VZV)によって起こる病気です。水痘は小児がかかる代表的なウイルス感染症で、発熱、発疹、水疱(すいほう、水ぶくれのこと)が主な症状です。VZVは一度感染すると一部の神経細胞節に潜伏し、免疫力が低下すると帯状疱疹として再び発症します。帯状疱疹は加齢に伴う免疫力の低下などが原因となるため、高齢者に多い病気です。
症状:全身のだるさと体幹・顔面を中心に発疹が出現
水ぼうそうの場合、VZVの潜伏期間は他のウイルスよりやや長い約2週間で、寒気やだるさ、発熱などの症状が出た後に体幹や顔を中心に発疹ができ、水疱となります。水ぼうそうの患者のせきやくしゃみからだけでなく、多量のウイルスが含まれる発疹、水疱に触ってもうつる可能性があります。園児や小学生の場合はすべての水疱がかさぶたになるまで登校できません。
感染経路:感染力はとても強く空気感染や接触感染が主
VZVは感染力が非常に強く、通常は空気感染によって気道から侵入します。患者の水疱に含まれる液からの接触感染も起こり得ます。
病原体:ヘルペスウイルスの仲間
VZVは口唇ヘルペスの原因ウイルスなども含まれるヘルペスウイルスの仲間です。VZVに初めて感染したときは発症率80%の高い割合で発症します。気道から侵入したウイルスは、鼻咽頭や付近のリンパ節で増殖し、その後血流に乗り全身に広がります(一次ウイルス血症)。その後、各臓器などで増殖したウイルスが二次ウイルス血症を起こし、皮膚に水疱ができ始めます。水ぼうそうが治った後も、VZVは神経細胞節に潜伏感染します。
治療・予防:解熱剤などの対症療法が原則
解熱剤などの対症療法が原則ですが、水ぼうそうの場合免疫が落ちていて重症化しやすい患者では抗ウイルス剤のアシクロビルやバラシクロビルなどが積極的に用いられます。また、かゆみを軽減する軟こうなども処方されることがあります。
ワクチンによる予防も非常に重要です。水痘の予防として日本国内で用いられている弱毒生ワクチンは85%の発症予防効果があり、たとえ発症しても重症化をほぼ100%予防できます(※)。2014年10月から水痘ワクチンが小児の定期接種(2回接種)として始まり、小児の水痘患者は大きく減少しています。また、帯状疱疹に関しても、50歳以上を対象にワクチン接種が進められています。
※米国における国内承認品の類薬でのデータです。
執筆:2021年9月
文責:大阪大学微生物病研究所
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