ポリオワクチン

ヒトからヒトへ感染するポリオ(小児まひ)

ポリオは、ポリオウイルスが原因の病気です。子供がかかることが多く、手足にまひを起こして一生残ってしまうことがあります。日本では、生ワクチン(現在は使っていません)による症状を除き、1980年を最後に新たな患者は出ていません。
ポリオウイルスは人の口から入り腸の中で増えるため、患者の便にウイルスが含まれています。
ポリオウイルスに感染しても多くの場合は症状が現れず、知らないうちに免疫ができます。しかし、感染した人の0.1~2%はウイルスが脊髄に入り込み、まひを起こしてしまいます。
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ワクチン接種は生後2~90カ月未満に計4回

ポリオワクチンは、市町村が費用を負担する「定期接種」として、生後2~90カ月未満に計4回接種します。生後2カ月になったらできるだけ早く、最初の接種を行うことが望ましいとされています。

国内では原則として5種混合ワクチン・4種混合ワクチンを使用

現在、国内では原則としてポリオワクチンを含む4種混合ワクチンを接種しております。2024年4月から、5種混合ワクチンが使用開始されました。3種混合ワクチンと不活化ポリオワクチンを別々に接種することも可能です。
ワクチンの種類は、ウイルスから感染する力をなくした「不活化ワクチン」です。以前使っていた「生ワクチン」は病原性を弱めてはいたものの感染力はあったので、まれにポリオと同じ症状が出ることがありました。生ワクチンは、現在は使われていません。

<5種混合ワクチン、4種混合ワクチンを製造しているメーカー>
・KMバイオロジクス株式会社
・一般財団法人阪大微生物病研究会

<不活化ポリオワクチンを製造しているメーカー>
・サノフィ株式会社 (50音順)

3回のワクチン接種でほぼ100%の人に免疫

3回のワクチン接種で、ほぼ100%の人が十分な免疫を獲得するという報告があります。

ワクチン全般における副反応の種類と対策・対応

応や発熱、リンパ節腫脹等の全身反応を惹起することが多く、これらは“副反応”と呼ばれています。
ワクチンの種類によっても異なりますが、発熱、接種箇所の赤み、はれ、しこり、発疹などが比較的高い頻度(数%から数十%)で認められます。通常、数日以内に自然に治るので心配の必要はありません。ただし、接種箇所のひどいはれ、高熱、ひきつけなどの症状がある場合は、医師の診察を受けてください。
ワクチンの種類によっては、極めてまれ(百万から数百万人に1人程度)に脳炎や神経障害などの重い副反応が生じることがあります。このような場合、健康被害を受けた本人やその家族が救済の請求を行うことで、審査が行われ、認定されたときは給付の対象となります。定期接種の場合は、予防接種法に基づく健康被害救済の対象となるため、救済の請求は、予防接種を受けたときに住民票を登録していた市区町村に対して行います。一方、任意接種の場合は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法に基づく救済の対象となるため、救済の請求は独立行政法人医薬品医療機器総合機構に対して行います。
ワクチンを接種した後はその場でしばらく様子を見ること、帰宅後もすぐに医師と連絡をとれるようにしておくことが必要です。

流行を抑えるため、ワクチンが有効

日本では、1960年に患者数5000人以上、死亡者が300人を超えるポリオの大流行が発生しました。当時、国内にはワクチンがなかったため、旧ソ連とカナダから経口生ポリオワクチン計1300万人分を緊急輸入し、全国の子どもたちに一斉接種を行って流行を抑えました。
その後、国産生ポリオワクチンが開発され、日本でのポリオ流行はなくなりました。1980年を最後に、生ワクチン(現在は使われていません)による症状を除き、ポリオウイルスによる患者は報告されていません。
しかし、ポリオウイルスはまだ地球上から根絶できていないため、日本に入ってくる可能性はあります。ほとんどの人が免疫を持っている現在の状態が続けば、大きな流行になることはありません。免疫を持つ人が減らないように、ワクチンの定期接種は続ける必要があります。

世界的根絶まであと一歩

ポリオウイルスは人にのみ感染し、他の動物には感染しません。世界のすべての人が免疫を持てばウイルス自体を撲滅できると考えられるため、世界保健機関(WHO)は 1988年、世界ポリオ根絶計画を採択し、ワクチン接種を推進しました。
2023年の時点で、流行国はパキスタンとアフガニスタンの2カ国のみになりました。世界からポリオという病気が無くなるまで、あと一歩です。

参考文献
・国立感染症研究所ホームページ“ポリオ(急性灰白髄炎・小児麻痺)とは”.
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/386-polio-intro.html
・国立感染症研究所ホームページ“ポリオ 2023年現在“
https://www.niid.go.jp/niid/ja/polio-m/polio-iasrtpc/12211-522t.html
・日本ワクチン学会「ワクチン基礎から臨床まで」.2018.P120
・一般社団法人日本ワクチン産業協会「2023予防接種に関するQ&A集」.2023.p75、 P160
・一般社団法人日本ワクチン産業協会「2023ワクチンの基礎 ワクチン類の製造から流通まで」.2023.P90
・平山宗宏「私の歩んだ研究の道とそこからの教訓①-ポリオワクチン-ポリオ生ワクチン緊急導入の経緯とその後のポリオ」.小児感染免疫.2007.Vol 19.P189-196 
https://www.jspid.jp/wp-content/uploads/pdf/01902/019020189.pdf
・林英生「感染症と病原体」.クバプロ.2015.P141
・(公財)予防接種リサーチセンター「予防接種と子どもの健康 2024年度版」から転載(一部改変)
・厚生労働省 予防接種健康被害救済制度について(2024/5/29閲覧)
・独立行政法人医薬品医療機器総合機構 医薬品副作用被害救済制度に関する業務 Q&A (2024/5/29閲覧)

執筆:2021年6月
最終更新:2024年9月
文責:一般財団法人阪大微生物病研究会

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