ポリオ (急性灰白髄炎・小児麻痺)
日本でもかつては年間5,000人以上の患者が発生
ポリオウイルスに感染して起こる病気で、高熱と、手足の筋肉を動かせなくなるマヒが主な症状です。日本では1940年代から全国各地で流行し、1960年には5,000人以上が発症した大流行がありましたが、1961年にワクチン接種が始まって患者が減りました。世界的には1988年に世界保健機関(WHO)が世界ポリオ根絶計画を掲げ、ワクチン接種の徹底などの活動を開始してから、患者数が減少しています。
症状:多くは無症状、マヒ型症状は感染者の0.1~0.2%
感染者の90~95%は無症状で、残りは発熱やのどの痛み、頭痛、せき、吐き気などかぜのような症状を示します。この症状に続き、1~2%がマヒのない髄膜炎(※)を発症します。典型的なマヒ型のポリオを発症するのは感染者の0.1~0.2%です。多くの場合マヒは回復しますが、症状が12カ月過ぎても残る症例では、永続的な後遺症を残す可能性が高くなります。
※髄膜炎:脳は髄膜という膜に覆われ保護されています。この膜に細菌やウイルスなどの病原体が感染し、炎症をおこした状態が「髄膜炎」です。
感染経路:無症状の感染者でも唾液や大便から排泄
感染した人の大便などに含まれるウイルスが口の中に入って感染します。無症状の感染者でも、唾液などは1~2週間、大便中は1~2カ月にわたってウイルスが含まれるとされます。
病原体:ポリオウイルスは人間にしか感染しない
手足口病を起こすウイルスなどが含まれるエンテロウイルスというウイルスの仲間に属すウイルスです。喉や小腸の粘膜で増殖し、血中や中枢神経に侵入します。人間にしか感染しないウイルスで、すべての人が免疫を獲得すればポリオを撲滅できると考えられるため、全人類にワクチンを接種する運動がWHOを中心に展開されています。
治療・予防:有効な治療薬は未開発
今のところ、特効薬など有効な治療法がないため、ワクチンによる予防が重要とされています。
ポリオの予防接種に用いられていた弱毒化経口生ワクチンは、世界で毎年40万人もの子どもたちを救っていると推定されていました。しかし、生ワクチンに含まれる毒性を弱めたウイルスによるポリオ様のマヒ(ワクチン関連マヒ)が200万~300万人に1人の割合で起こりました。日本では、2012年に生ワクチンに代わり不活化ワクチンが導入され、定期接種に採用されました。現在は4種混合ワクチン(ジフテリア、破傷風、百日ぜき、ポリオ)も定期接種として導入されています。
執筆:2021年9月
文責:大阪大学微生物病研究所
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