ジフテリアワクチン

ジフテリアはどんな病気?

毒素を作るジフテリア菌が原因の病気で、感染した人の5~10%が死亡するとされています。喉などに感染して毒素を出し、高熱や喉の痛みなどの症状を引き起こします。毒素が心臓の筋肉や神経に作用すると、眼球や横隔膜などのまひ、心不全などを起こし、重症になる場合や亡くなる場合があります。
日本では1999年を最後にジフテリアの患者は発生していませんが、海外では発生が報告されています。ちなみに、毒素を作らないジフテリア菌も、喉などの常在菌として存在しますが、病気の原因にはなりません。
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ワクチン接種は12歳までに計5回

ワクチンは、市町村が費用を負担する「定期接種」で、生後2カ月~12歳に計5回、接種します。
一般的には、5種混合ワクチンを生後2カ月~7カ月未満で接種開始し20~56日の間隔をおいて3回接種し、その6カ月~18カ月後に4回目を接種します。4種混合ワクチンを接種する場合は、生後2カ月~12カ月の期間に3回、その12カ月~18カ月後に4回目を接種します。最後に2種混合ワクチンを11歳~12歳の期間で1回接種します。

90%を超える高い予防効果

ジフテリアは、ワクチン接種で罹患(りかん)リスクを95%程度減らせると報告されています。

ワクチン全般における副反応の種類と対策・対応

ワクチンを接種して期待される免疫効果と同時に、接種箇所の赤み、はれ、痛み等の望ましくない局所反応や発熱、リンパ節腫脹等の全身反応を惹起することが多く、これらは“副反応”と呼ばれています。
ワクチンの種類によっても異なりますが、発熱、接種箇所の赤み、はれ、しこり、発疹などが比較的高い頻度(数%から数十%)で認められます。通常、数日以内に自然に治るので心配の必要はありません。ただし、接種箇所のひどいはれ、高熱、ひきつけなどの症状がある場合は、医師の診察を受けてください。
ワクチンの種類によっては、極めてまれ(百万から数百万人に1人程度)に脳炎や神経障害などの重い副反応が生じることがあります。このような場合、健康被害を受けた本人やその家族が救済の請求を行うことで、審査が行われ、認定されたときは給付の対象となります。定期接種の場合は、予防接種法に基づく健康被害救済の対象となるため、救済の請求は、予防接種を受けたときに住民票を登録していた市区町村に対して行います。一方、任意接種の場合は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法に基づく救済の対象となるため、救済の請求は独立行政法人医薬品医療機器総合機構に対して行います。
ワクチンを接種した後はその場でしばらく様子を見ること、帰宅後もすぐに医師と連絡をとれるようにしておくことが必要です。

トキソイドというタイプのワクチン

ジフテリアのワクチンはトキソイドと呼ばれるタイプで、ジフテリア菌が生み出す毒素を無毒化したものです。国内の定期接種で使われる「5種混合ワクチン」「4種混合ワクチン」「3種混合ワクチン」「2種混合ワクチン」はそれぞれ下記の病気のワクチンが混合されていて、いずれもジフテリアトキソイドを含んでいます。

<5種混合ワクチン>
・ジフテリア
・百日せき
・破傷風
・ポリオ
・インフルエンザ菌b型(Hib)による感染症

<4種混合ワクチン>
・ジフテリア
・百日せき
・破傷風
・ポリオ

<3種混合ワクチン>
・ジフテリア
・百日咳
・破傷風

<2種混合ワクチン>
・ジフテリア
・破傷風

<5種混合ワクチン、4種混合ワクチンを製造しているメーカー>
・KMバイオロジクス株式会社
・一般財団法人阪大微生物病研究会

<3種混合、2種混合ワクチンを製造しているメーカー>
・一般財団法人阪大微生物病研究会
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日本では約20年間、新規の患者はなし

ジフテリアはかつて国内外で流行し、かかった人の約50%が亡くなるという地域もありました。先進国ではワクチン接種の普及とともに患者数が激減し、日本では1999年を最後にジフテリアの患者は発生していません。
しかし、1990年代前半には、予防接種率の低下が原因で旧ソ連でジフテリアが流行した事例があり、発展途上国では現在も患者が発生しています。日本でもワクチン接種者が減少した場合や、海外からの持ち込みによる感染者の発生が危ぶまれています。

参考文献
・厚生労働省ホームページ.“ジフテリア”.
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/diphtheria/index.html
・国立感染症研究所ホームページ.“ジフテリアとは”. https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/411-diphteria-intro.html
・公益財団法人予防接種リサーチセンター「予防接種実施者のための予防接種必携2019」2019.P70-71
・日本ワクチン学会「ワクチン基礎から臨床まで」2018.P71
・竹下望「あなたも名医!エキスパートたちが教える!ワクチン〈総整理〉(あなたも名医!Jmed68)」.日本医事新報社.2020.P89
・一般社団法人日本ワクチン産業協会「2023予防接種に関するQ&A集」
・(公財)予防接種リサーチセンター「予防接種と子どもの健康 2024年度版」から転載(一部改変)
・厚生労働省 予防接種健康被害救済制度について(2024/5/29閲覧)
・独立行政法人医薬品医療機器総合機構 医薬品副作用被害救済制度に関する業務 Q&A (2024/5/29閲覧)

執筆:2021年6月
最終更新:2024年7月
文責:一般財団法人阪大微生物病研究会

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