ジフテリア

感染した人の5~10%が死亡

ジフテリア毒素を作るジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)が感染して起こす病気です。高熱や喉の痛みなどの症状が特徴的で、適切に治療しても、感染した人の5~10%が死亡するとされます。
 現在の日本ではほとんど発症例がありませんが、1990年以降、旧ソビエト連邦で大規模な流行があり、5000人以上が死亡したと報告されています。

症状:高熱や喉の痛み

 潜伏期間は2~3日。症状が現れる場所によって、「呼吸器ジフテリア」と「皮膚ジフテリア」に分けられます。
呼吸器ジフテリア
 高熱、喉の痛み、飲食物が飲み込みにくい、声がかすれるなどの症状が出ます。厚い灰白色の膜(死んだ細胞が作る膜)が喉や鼻の粘膜に見られるのも特徴です。この膜が広がると気道がふさがれて呼吸ができなくなり、気管切開が必要になる場合もあります。炎症が広がって重症化する場合もあり、致死率も高く感染した人の5~10%が死亡します。
 また、ジフテリア毒素が血液とともに他の臓器に運ばれ、心臓や腎臓、末梢神経などで合併症(心筋炎、神経炎)を起こすこともあります。
皮膚ジフテリア
 うろこ状の発しんや潰瘍(細胞が炎症を起こして崩れた状態)ができます。呼吸器ジフテリアと比べ合併症は少ないことが知られています。

感染経路:口からのしぶきなどで感染

主に、患者の口や鼻などから出たしぶきでヒトからヒトに感染します。皮膚の患部から出た膿(うみ)などによる接触感染も起こり得ます。

病原体:毒を出さないジフテリア菌は病気を起こさない

 ジフテリア菌は棒のような形をした細菌です。毒素を作らないジフテリア菌が喉や皮膚にいますが、病気は引き起こしません。

治療・予防:治療にはペニシリンなどを使用

 治療はペニシリンやエリスロマイシン、アジスロマイシン(ペニシリンアレルギーの場合)などの抗菌薬を使います。
 必要に応じて、ジフテリア毒素に対する抗体を含む血清(ジフテリア抗毒素血清)による治療を行います。
 現在定期接種として採用されている4種混合ワクチンの一つがジフテリアに対するワクチンです。

執筆:2021年9月
文責:大阪大学微生物病研究所

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