デング熱ってどんな病気?
デングウイルスを持つ蚊に刺されて感染する病気です
デング熱は、アジア、中南米、アフリカなど世界の熱帯・亜熱帯地域で広く流行している感染症です。WHO(世界保健機関)は年間約3億9000万人がデングウイルスに感染し、うち約9600万人が発症すると推計しています。近年は世界的に患者報告数が増えています。
日本でも、海外で感染した「輸入症例」が毎年報告されているほか、2014年には東京・代々木公園周辺などで国内感染事例が確認されました。
【症状】
デングウイルスに感染した人の60~80%は症状が出ない「不顕性感染」とされています。症状が出る場合、蚊に刺されてから2~14日(多くは3~7日)の潜伏期間を経て、突然の高熱が出ます。
発熱に伴い、頭痛や目の奥の痛み、関節痛、筋肉痛、全身けん怠感などがみられ、発症後3~4日目には胸部・体幹から発疹が現れ、全身に広がります。
【重症化のリスク】
多くは1週間程度で自然に回復に向かいます。しかし、発症から3~7日後の熱が下がる時期に、ごく稀に重症化して、血管から血しょうが漏れ出たり、血が止まりにくくなって重篤な出血症状(吐血や下血など)をもたらしたりする「重症デング」を引き起こすことがあります。
重症化すると多臓器不全により死に至ることもあります。乳幼児や高齢者、妊婦のほか、糖尿病や腎不全などの基礎疾患を持つ人は重症化のリスクがあります。
【感染経路】

主な感染経路は、ウイルスを保有する「ネッタイシマカ」や「ヒトスジシマカ」などの蚊に刺されることです。通常、ヒトからヒトへ直接感染することはありませんが、輸血や母子感染などのまれな例外は報告されています。主な感染経路は、患者の血液中にウイルスが存在する時期に蚊が吸血し、その蚊が別のヒトを刺すことで感染が成立するものです。日本ではヒトスジシマカが主に5月中旬~10月下旬に活動するため、この時期は注意が必要です。
【病原体】
フラビウイルス科オルソフラビウイルス属に分類される「デングウイルス」が原因です。デングウイルスには1型から4型まで4つの異なる血清型が存在します。一度感染すると同じ血清型には免疫ができますが、別の血清型の感染は十分には防げません。
異なる血清型に再感染した場合、初回の感染で作られた抗体が、かえってウイルス感染を増強してしまい、重症化の可能性を高める「抗体依存性感染増強(ADE)」という現象が起こることが知られています。
【治療・予防】
デングウイルスに対する有効な抗ウイルス薬はなく、症状を和らげる対症療法が基本となります。解熱鎮痛薬としては「アセトアミノフェン」を使用し、アスピリンやイブプロフェンなどの非ステロイド性抗炎症薬は、出血傾向を助長する危険があるため使用は避けるべきとされています。重症化を防ぐため、血小板数の減少や血液濃縮などの重症化サインを慎重に観察することが重要です。
現在、日本国内で承認された有効なワクチンはありません。そのため、流行地域では、蚊に刺されないための対策が最大の予防法となります。
・肌の露出を避ける 長袖シャツ、長ズボンを着用し、サンダル履きを避けるなど肌の露出を少なくしましょう。
・虫よけ剤(忌避剤)の使用 虫よけ剤を、年齢ごとの用法・用量や使用上の注意を守って適切に使用してください。熱帯地方など大量の汗をかきやすい環境では、こまめに塗り直すことが効果的です。
【参考サイト】
・WHO「Dengue」
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/dengue-and-severe-dengue
・厚生労働省「デング熱に関するQ&A」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/dengue_fever_qa.html
・国立健康危機管理研究機構(JIHS)「デング熱」
https://id-info.jihs.go.jp/diseases/ta/dengue/index.html
2026年3月
執筆:根本 毅
文責:大阪大学微生物病研究所
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