手足口病ってどんな病気?
子どもを中心に夏に流行する感染症
手足口病は、子どもを中心に主に夏に流行する感染症です。例年は7月下旬頃に流行のピークを迎えるのですが、2024年は10月になっても流行が拡大しています。(2024年10月29日現在)
ウイルスが原因で、手足や口の中に発疹ができます。ワクチンや特別な治療方法はなく、石けんでこまめに手洗いをすることが大切です。
症状:手足と口の中に発疹
手足口病はウイルスに感染してから通常3〜7日で症状が現れます。症状は、手指や口の中、足の裏、足の甲などに現れる2~3ミリの水疱(発疹)です。発熱することもありますが、通常は高熱が続くことは多くありません。多くの場合、1週間ほどで自然に改善しますが、まれに髄膜炎や脳炎などの重篤な合併症を引き起こすことがあります。
また、発疹は痛みを伴うことがあり、口の中の場合は食事や飲み物の摂取が困難になります。
感染経路:接触感染と飛沫感染
手足口病のウイルスは感染者の唾液や鼻水、糞便、水疱の中に存在します。ウイルスが付着した手や物を経由して、ウイルスが口に入ることで感染が広がります。咳やくしゃみによる飛沫感染も起こりえます。さらに、発疹が破れて出てきた液体でも感染するため、発疹に触れないよう注意が必要です。感染者に症状がない場合でもウイルスを排出することがあるため、子どもたちが濃厚に接触する保育園などでは特に感染拡大の可能性が高くなります。
病原体:エンテロウイルス属に分類されるウイルス
手足口病は、エンテロウイルス属に分類されるコクサッキーA群ウイルス(A6、A16)やエンテロウイルスA71などが原因です。これらのウイルスは腸管で増殖し、その後、血液中や中枢神経系に侵入することがあります。特にエンテロウイルスA71は、髄膜炎や脳炎などの重篤な合併症を引き起こすことがあります。
治療・予防:対症療法と手洗いの徹底
手足口病に特効薬はなく、治療は症状に応じて対処することになります。口内の痛みを軽減するために、冷たい飲み物や軟らかい食べ物が有効です。
まれに重篤な合併症を引き起こすことがあるため、しっかりと経過観察をして異変があったらすぐに医療機関を受診してください。
現在、国内では手足口病に対するワクチンは存在しません。予防には、手洗いの徹底が最も重要です。特にトイレの後やおむつ交換後、食事の前に手をしっかり洗うことが推奨されます。保育施設や家庭内で感染者が出た場合、タオルやおもちゃの共用を避けるようにしましょう。
2024年10月
執筆:根本毅
監修:国立感染症研究所 清水博之先生
文責:大阪大学微生物病研究所
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