サル痘ってどんな病気?

ヒトへの感染は1970年にザイールで確認

サル痘はもともとサルの病気として知られていましたが、ヒトへの感染は1970年にザーイールで報告され、以降中央アフリカ、西アフリカで流行が確認されていました。これまではアフリカ以外の地域での感染確認は渡航者が持ち帰る例などに限られていましたが、2022年以降世界各地域でサル痘患者の報告が増加しており、2022年7月までに2万人以上の感染者が確認されています。
Our World in Data: Monkeypox 

サル痘の流行は、天然痘が根絶されて天然痘ワクチン接種が行われなくなったことから、有効な免疫を持たない人が多くなったことも流行の原因の一つと考えられています。日本でも1976年以降ワクチンの定期接種が廃止されました。しかし、バイオテロにウイルスが用いられる危険性が指摘されていることから2002年より製造を再開、ワクチンを備蓄しています。天然痘のワクチンはサル痘にも有効であることがわかっています。

症状:症状では天然痘と見分けがつきにくい

潜伏期間は7〜21日(平均12日)、発疹、発熱、発汗、頭痛、リンパ節の腫れなどの症状が先に現れてから水疱(みずぶくれ)をともなう発疹があらわれます。致死率はこれまでのアフリカの流行では数%程度と報告されていますが、死亡例のない流行もありました。2022年7月に発表された528の症例では死亡例は報告されていません。

感染経路:接触感染が主。飛沫感染も確認

感染した動物や人の血液・体液・皮膚の水疱にふれることで感染します。
また、感染した人のせきやくしゃみなどによる飛沫による感染も確認されています。
ヒトからヒトへの感染は濃密な接触が必要であり、前述の2022年7月発表の症例では性的交渉による感染が主(95%)とされています。
そのため飛沫感染やエアロゾル感染が主な感染ルートである新型コロナウイルスのような爆発的な感染拡大はないと考えられていますが、飛沫などによる感染も確認されていることから、今後継続した調査が必要です。

病原体:天然痘と同じオルソボックスウイルス属

レンガ状で直径が300nmを超える巨大なDNAウイルスです(インフルエンザウイルスやコロナウイルスは100〜200nm程度)。

サル痘ウイルスはサルにも感染しますが、もともと自然界ではリスやネズミなどがウイルスをもっていると考えられています。しかし、現時点では明らかになっていません。

治療・予防:天然痘ワクチンが有効

日本では抗ウイルス薬は認可されていません。ワクチンは天然痘ワクチンが有効であることがわかっています。日本では、1976年に天然痘ワクチンの定期接種が廃止され製造も中止されていました。しかし、バイオテロに天然痘ウイルスが用いられる危険性が指摘されたことから、世界的にワクチン製造が再開されました。日本でも2002年に製造を再開、ワクチンを備蓄しています。

執筆:2022年8月
文責:大阪大学微生物病研究所

感染症

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