すべてのウイルスがわたしたちに病気をおこす?
わたしたちの体に病気を起こすウイルスはごく一部です。
確かにウイルスは、わたしたちの体に病気を引き起こす原因として発見されました。ウイルスは光学顕微鏡でも見えないので、わたしたちのからだになにか症状を起こさないと認識されなかったためと考えられます。
しかし現在では、ヒトに病気を引き起こさないウイルスがたくさんいることがわかっています。たとえば、理科の教科書でも出てきたバクテリオファージというウイルスは、細菌に感染するウイルスでヒトの細胞には感染しないので、ヒトに病気をおこすことはありません。
バクテリオファージは腸内細菌叢の細菌に感染しているので、わたしたちの身体の中にたくさんいますが、バクテリオファージを直接の原因とするヒトの病気は確認されていません。
また、新型コロナウイルスは自然界ではコウモリやセンザンコウなどヒト以外の生物の体内にいて、自然宿主となる生物に病気を起こすことなく共生しています。インフルエンザもカモなど水鳥の腸内にいるウイルスで、水鳥は病気になりません。
ヒトを始めとする生物に病気を起こすウイルスはごく一部で、全体のわずか数%程度と考えられています。
さらに、ウイルスの中には自らの遺伝子を宿主の細胞に組み込むものもいて、生物のDNAにはウイルスのものと考えられる配列がたくさん確認されています。このことから、生物の進化にも深く関わっているのではないかとも考えられています。
ウイルスは「病原体」にもなりますが、実はほとんどが長い生物の歴史をともに過ごしてきた共存相手なのです。
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