細菌はすべて病気をひきおこす病原体?
病気をひきおこす細菌はごく一部しかいません。
最近「腸内細菌」という言葉をよく聞きます。腸内はじめ、皮膚、口腔内などわたしたちの体には常在菌がいて、共生しています。
常在菌のなかには、ヒトの腸内で良い働きをする「善玉菌」もいれば、悪い影響を与えるとされる「悪玉菌」、どちらでもない「日和見菌(ひよりみきん)」もいます。すべての細菌がわたしたちの体に病気をおこすわけではありません。
また、同じ種に属する細菌でも、ヒトに病気を引き起こす遺伝子(設計図)をもっている細菌と持っていない細菌がいます。
たとえば食中毒を起こす腸炎ビブリオは、わたしたちに下痢をおこす遺伝子セットを持っている細菌と持っていない細菌がいて、下痢をおこす遺伝子を持っているのは全体の約1%程度と考えられています。
ジフテリア菌も、毒素をつくるジフテリア菌とつくらないジフテリア菌がいます。ジフテリアという病気をおこすのは「ジフテリア毒素」という毒素をつくるジフテリア菌だけで、毒素をつくらないジフテリア菌は、のどや皮膚などの常在菌で病気はおこしません。
細菌以外にも、ウイルスや寄生虫など私たちの周りには目に見えない微生物がたくさんいますが、皆ともに地球で生きる隣人です。
執筆:2022年8月
文責:大阪大学微生物病研究所
イラスト:長門香織
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