エボラウイルス病(エボラ出血熱)
エボラウイルスが原因で起こる病気で、1976年にアフリカで初めてウイルスが単離されました。
エボラウイルスが原因で起こる病気で、1976年にアフリカで初めてウイルスが単離されました。2019年3月までにアフリカ地域を中心に30回以上のアウトブレイクが報告され、致命率が高いことやヒトからヒトに感染することなどからWHOが対応の強化や継続的な警戒が必要であると指摘しています(国立感染症研究所HP)。
症状:急性の熱性疾患
全身倦怠感、発熱(38度以上の高熱)、頭痛、のどの痛みなどの症状に始まり、おう吐や下痢などが見られます。エボラ患者が必ずしも出血症状を示すわけではないことから、最近は「エボラ出血熱」ではなく「エボラウイルス病」と呼ばれるようになっています。致死率はウイルスの種類(6種類、「病原体」の項目参照)と医療のレベルによって異なりますが、平均50%程度と考えられています。
感染経路:体液や臓器への直接接触
感染した動物や患者の血液や臓器に直接触れることにより感染します。精液にもウイルスが確認されており、性行為を介しても感染する場合があると考えられています。
病原体:ウイルスは6種類
最初の患者の出身地を流れる川の名前にちなんで「エボラウイルス」と名付けられました。ザイールエボラウイルス、タイフォレストエボラウイルス、スーダンエボラウイルス、ブンディブギョエボラウイルス、レストンエボラウイルス、ボンバリエボラウイルスの6種類に分類されています。アフリカに生息するコウモリからエボラウイルスの遺伝子やウイルスが単離されたことから自然界でウイルスを保有しているのはコウモリであると考えられていますが、サルやアンテロープなどの可能性も考えられています。
治療・予防:
治療薬は、二種類のモノクローナル抗体が2020年に米国食品医薬曲(FDA)によって認可されました(Inmazeb, Ebanga)。
ワクチンはERVEBO®というザイールエボラウイルスに対して予防効果のあるワクチンがFDAによって承認されており、アウトブレイクへの対応や医療従事者などエボラ感染のリスクが高い成人に対して接種が奨励されています。また、東京大学医科学研究所を中心とした国際研究グループによる開発も進んでおり、大阪大学微生物病研究所渡辺登喜子教授も研究グループに参加しています。
※エボラワクチン開発を含むウイルス研究について、研究者の活動を紹介する渡辺教授のセミナーが下記からArchive視聴できます。
2010.11.18超学校ONLINE x 大阪大学リサーチクラウドカフェ
「ウイルスに挑む〜ウイルス研究の最前線:フィールドワークから臨床まで〜」
人間の活動と感染症
エボラウイルス病や、エイズなどの感染症は主として熱帯未開地(ジャングル)の動物が感染していて、付近に住む人々のあいだで風土病のように地域に限定して流行していました。人間の活動範囲が広がり、ジャングルに外国から人が訪れるようになったことで、これらの病原体に感染して母国に持ち帰る例が多くあります。また、その逆の持ち込み例もあります。国境を超えた人々の交流にともない、病原体も国境を超えて広がります。グローバル化した国際社会において、国同士の協力による病原体の国際的な監視体制の確立や、情報交換ネットワークの整備が強く望まれています。
執筆:2022年6月
文責:大阪大学微生物病研究所
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