風しん

風しんウイルスが原因で起こる病気で、風邪に似た症状と発しんが特徴

通常3日程度で症状が治まるので、三日はしかとも言われます。妊婦がウイルスに感染すると胎児にも感染し、流産や先天性障害の危険性が高くなります。

症状:不顕性感染でも感染力はあり

風しんは、風しんウイルスが原因で起こる病気です。平均2〜3週間の潜伏期間ののち、発熱、発しんが全身に広がり、リンパ節が腫れるのが特徴です。しかし、感染しても症状が現れない不顕性感染も15〜30%程度あり、その不顕性感染の患者からも周囲の免疫を持たない人に感染することがあります。また、発症後、関節炎や、血を止める働きをする血小板が減る血小板減少性紫斑病、風しんウイルスが脳に炎症を起こす脳炎など、重症化することもありますが、基本的には対症療法で自然に改善していく感染症です。

妊娠初期の感染は胎児が先天性風疹症候群を発症する危険性

 風しん自体の重症化はまれではありますが、妊娠初期に風しんに感染すると流産の危険性が高くなります。また、流産を免れた新生児でも、眼(白内障や緑内障など)、耳(感音性難聴)、心臓(動脈管開存症などの先天性心疾患)の三つを古典的症状とする、先天性風疹症候群(CRS)を発症する可能性があります。またそれらの症状以外にも、血小板減少や、低出生体重、頭蓋内石灰化などが起こる可能性があります。

感染経路:咳やくしゃみによる飛まつ感染

 人から人に、せきやくしゃみで飛んだ飛まつによってウイルスが広がります(飛まつ感染)。1人の感染者が周囲の免疫を持たない人に感染させる2次感染者の数「基本再生産数」が5〜7と比較的高く(インフルエンザは約2、新型コロナは2~3前後)、感染力が強いウイルスです。

病原体: 風しんウイルスは人にのみ感染

風しんウイルスは、人にしか感染しません。13の遺伝子型がありますが、どの遺伝子型であってもワクチンの予防効果はあります。

日本国内での流行状況

風しんは子どもたちの間で起こる感染症と考えられがちですが、2012~2013年には20~40歳代の成人で流行し、結果的に先天性風疹症候群の症例が多く報告されました。日本は、小児期の風しん含有ワクチンの接種制度が変遷した影響で、成人の特に男性で、ワクチン接種をする機会が与えられなかったために抗体価が低い年齢層があり、風しんは現在、成人で多く報告されています。

治療・予防:妊娠を希望する女性を対象に抗体検査の取り組みも

有効な抗ウイルス薬はありませんが、予防法としてワクチンがあります。乳幼児を対象に、2006年から麻しん・風しん混合ワクチン(MRワクチン)が定期接種として導入されています。また、先天性風疹症候群の予防のためには、成人、特に妊婦の風しんを予防することが重要です。そのため、厚生労働省は2014年に「風しんに関する特定感染症予防方針」を策定し、多くの自治体は妊娠を希望する女性を主な対象として抗体検査を受けられる取り組みを実施しています。また、2019年2月から、風しん含有ワクチンを接種する機会がなかった、昭和37~53年度生まれの成人男性を対象に、風しんの抗体検査および抗体価が十分でない場合に第5期の定期接種としてワクチンを接種できる追加的対策が開始されました。

執筆:2021年10月
文責:大阪大学微生物病研究所

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