おたふくかぜワクチン

おたふくかぜと呼ばれる流行性耳下腺炎

 おたふくかぜは流行性耳下腺炎とも呼ばれ、ムンプスウイルスへの感染により耳の下の唾液腺などが腫れます。感染力が強く、3~6歳の患者が全体の約6割を占めています。
 髄膜炎や難聴、精巣炎、卵巣炎などを引き起こすことがあります。

小学校入学前に2回の接種を推奨

おたふくかぜワクチンは定期接種の対象ではなく、費用を自分で負担する「任意接種」です。日本小児科学会は、1歳と小学校就学前1年間の2回の接種を推奨しています。

予防効果は80%ほど

 おたふくかぜのワクチンは、ウイルスの毒性を弱めて病気を起こさないようにした「生ワクチン」という種類です。ワクチン接種によって、おたふくかぜにかかるリスクを80%程度減らせると報告されています。また、ワクチン接種をしていれば、おたふくかぜにかかっても、接種しなかった場合より症状が軽くなるとされています。
<おたふくかぜワクチンを製造しているメーカー>
・第一三共株式会社
・武田薬品工業株式会社 (50音順)

ワクチン全般における副反応の種類と対策・対応

 ワクチンを接種した後に腫れや痛みなどの症状がでることがあります。この好ましくない症状を「副反応」と呼びます。副反応が起こる原因の多くは、ワクチンで免疫を得るために起こしている免疫反応と考えられますが、ワクチンとの関連が不明瞭なものもあります。
 ワクチンを接種後、よく見られる症状に以下のようなものがあります。
【注射した場所にみられる症状】腫れ、赤み、痛み、など
【全身の症状】発熱、だるさ、筋肉痛、頭痛、など
また、感染した時に起こる症状(発熱、発疹など)が現れる場合があります。
 これらの症状は自然に治る軽い症状であることがほとんどですが、症状が重い場合にはかかりつけ医に相談してください。
 一方で、まれに以下のような重い副反応が起こることもあります。 
おう吐、じんましん、失神、アナフィラキシー、けいれん、無菌性髄膜炎、など。
 これらの症状が出た場合は、医師による適切な処置が必要です。重い副反応が現れても迅速に対応できるように、ワクチン接種後はしばらくその場で様子を見て、帰宅後も医師とすぐに連絡がとれるようにしておくことが必要です。
 ワクチン接種によって重い症状などが出た場合は、救済制度があります。申請方法については、かかりつけ医やお住まいの市町村にご相談ください。
 ワクチンを接種した後に重い症状が出た場合は、その原因がわからなくても「副反応の疑い例」として、厚生労働省に報告し集約され、今までわかっていなかった副反応を発見することにも役立てられます。気になる症状があれば、かかりつけ医に報告・相談するようにして下さい。
多くの国では定期接種に
 日本では、おたふくかぜワクチンを含むMMRワクチン※が1989年に定期接種に導入されましたが、無菌性髄膜炎の副反応が社会問題化し、1993年から中止されています。
 海外では、先進国を中心に122カ国でMMRワクチンが定期接種として使用されています。日本では、専門家らがおたふくかぜワクチン単体の定期接種化を求めています。
※MMRワクチン=麻しん、風しん、おたふくかぜ混合ワクチン

参考文献
* 公益財団法人予防接種リサーチセンター「予防接種実施者のための予防接種必携2019」2019.P32、98
* 日本小児科学会「日本小児科学会の「知っておきたいワクチン情報」予防接種の副反応と有害事象」2018.参考 2021.04 
* 一般社団法人日本ワクチン産業協会「2020予防接種に関するQ&A集」.2020. P232
* WHO vaccine-preventable diseases: monitoring system. 2020 global summary
https://apps.who.int/immunization_monitoring/globalsummary/
* 日本ワクチン学会「クチン基礎から臨床まで」.2018.P40


執筆:2021年9月
文責:一般財団法人阪大微生物病研究会

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