日本脳炎
日本脳炎ウイルスを持った蚊に刺されて感染
日本脳炎ウイルスが原因で起こる感染症です。人から人へ直接、感染することはなく、このウイルスを持つ蚊に刺されて感染します。感染してもほとんどの場合は症状が現れず、発症する割合は0.1~1%です。世界ではアジアを中心に年間6万人以上が発症し、約1万人が死亡しています。日本では1960年代に年間1,000人程度の患者が発生していましたが、積極的にワクチン接種を進めた結果、現在では患者の発生は多い年でも10人程度となっています
症状:ほとんどが不顕性感染、発症すると高熱、頭痛、嘔吐などの症状
潜伏期間は5~15日間。感染しても症状が現れない不顕性感染がほとんどですが、0.1~1%の割合で発症、発熱、頭痛、嘔吐などの症状がでたあと、さまざまな精神・神経症状(意識障害、けいれん、マヒなど)がみられます。致死率は20~50%とされています。後遺症はマヒ、知能低下、てんかんなど様々で、脳・神経のどの部位が傷害されるかによって異なります。
感染ルート:豚の体内で増殖したウイルスを蚊が運ぶ
日本脳炎ウイルスは豚の体内で越冬・増殖し、「コガタアカイエカ」という日本全国に分布する蚊によって豚から豚、または豚から人間に運ばれます。日本では、飼育中の豚の感染状況を監視し、国立感染症研究所がデータを公開しています。
出典:国立感染症研究所ホームページ
病原体:蚊の唾液と一緒に人の体内に
日本脳炎ウイルスは、フラビウイルスと呼ばれるウイルスの仲間で、蚊が運ぶウイルスです。日本では水田などで発生するコガタアカイエカが発生する夏から秋にかけてウイルスも発生します。蚊が人を刺したときに、ウイルスが蚊の唾液と一緒に注入されて感染します。蚊の唾液成分がないと感染できないため、この唾液成分をターゲットにした治療法の開発も試みられています。(https://www.niaid.nih.gov/news-events/mosquito-borne-disease-vaccine-safe)
治療法:有効な抗ウイルス薬はまだない
日本脳炎に有効な抗ウイルス薬は開発されていません。防蚊対策やワクチンにより病気にかからないよう予防することが重要です。
執筆:2021年9月
文責:大阪大学微生物病研究所
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