風しんワクチン
妊婦は注意すべき風しん
風しんは、発熱や発しん、リンパ節の腫れなどの症状が現れる感染症です。風しんウイルスが感染して起こりますが、約15~30%の人は症状が出ずに感染に気付かないことが知られています。
症状は比較的軽いのですが、2000~5000人に1人の割合で脳炎などの合併症が発生することがあります。大人がかかると乳幼児より重くなる傾向があり、妊娠20週ごろまでの妊婦が感染すると、胎児も感染し、難聴や心臓病、目の障害などを持って生まれてくる可能性が高くなります。
日本は現在、風しん排除を目標に対策を実施しています。
定期接種は1歳と小学校入学前の計2回
風しんのワクチンは、市町村が費用を負担する「定期接種」として、1歳と小学校入学前の1年間の計2回、接種できます。期間外に接種する場合は、自分で費用を負担する「任意接種」となります。
大人も定期接種の対象
風しんの予防接種は現在、小児だけでなく一部の成人も定期接種の対象です。対象となっているのは、1962(昭和37)年4月2日~1979(昭和54)年4月1日生まれの男性です。これは2025年3月31日までの期間限定の制度です。
この世代の男性は、風しんの定期接種を受ける機会が無かったため、その他の年代と比べて風しんの抗体を持っていない方が多いのです。実際、近年の風しんの流行は成人男性を中心に広がっています。
妊娠初期の女性が風しんウイルスに感染して、おなかの赤ちゃんが先天性の障害(先天性風しん症候群)を持って生まれてこないようにするため、妊娠する可能性のある女性や周囲の人々は感染のリスクを抑える必要があります。
※妊娠中の女性はワクチンを接種することが出来ません。
※定期接種の期間外の接種は、自分で費用を負担する「任意接種」となります。
定期接種では混合ワクチン(MRワクチン)を使用
現在、国内の定期接種では麻しんワクチンと風しんワクチンを混合した「MRワクチン」が使われています。ワクチンの種類は、ウイルスを弱めて病気を起こさないようにした「生ワクチン」です。
<MRワクチンを製造しているメーカー>
・第一三共株式会社
・武田薬品工業株式会社
・一般財団法人阪大微生物病研究会 (50音順)
<風しんの単抗原ワクチンを製造しているメーカー>
・武田薬品工業株式会社
1回の接種で95%以上の人に免疫
風しんの予防には予防接種が最も有効な方法です。1回の風しんワクチン※の接種で95%以上の人が風しんウイルスに対する免疫を獲得することができると言われています。
※主に使用されるのは、麻しん風しん混合ワクチン(MRワクチン)です。
ワクチン全般における副反応の種類と対策、対応
ワクチンを接種して期待される免疫効果と同時に、接種箇所の赤み、はれ、痛み等の望ましくない局所反応や発熱、リンパ節腫脹等の全身反応を惹起することが多く、これらは“副反応”と呼ばれています。
ワクチンの種類によっても異なりますが、発熱、接種箇所の赤み、はれ、しこり、発疹などが比較的高い頻度(数%から数十%)で認められます。通常、数日以内に自然に治るので心配の必要はありません。ただし、接種箇所のひどいはれ、高熱、ひきつけなどの症状がある場合は、医師の診察を受けてください。
ワクチンの種類によっては、極めてまれ(百万から数百万人に1人程度)に脳炎や神経障害などの重い副反応が生じることがあります。このような場合、健康被害を受けた本人やその家族が救済の請求を行うことで、審査が行われ、認定されたときは給付の対象となります。定期接種の場合は、予防接種法に基づく健康被害救済の対象となるため、救済の請求は、予防接種を受けたときに住民票を登録していた市区町村に対して行います。一方、任意接種の場合は、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法に基づく救済の対象となるため、救済の請求は独立行政法人医薬品医療機器総合機構に対して行います。
ワクチンを接種した後はその場でしばらく様子を見ること、帰宅後もすぐに医師と連絡をとれるようにしておくことが必要です。
アメリカでは既に風しんウイルスの排除に成功
南北アメリカ大陸では、ワクチン接種の徹底により、2015年に世界で初めて風しんの排除を達成しました。日本も排除を目標にしています。
参考文献
・厚生労働省ホームページ“風しんについて”
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/index.html
・国立感染症研究所ホームページ“風疹とは”
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/430-rubella-intro.html
・日本ワクチン学会「ワクチン基礎から臨床まで」2018.P139/P145
・WHO webサイト
https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/rubella
・一般社団法人日本ワクチン産業協会「2023予防接種に関するQ&A集」2023.p75
・(公財)予防接種リサーチセンター「予防接種と子どもの健康 2024年度版」から転載(一部改変)
・厚生労働省 予防接種健康被害救済制度について(2024/5/29閲覧)
・独立行政法人医薬品医療機器総合機構 医薬品副作用被害救済制度に関する業務 Q&A (2024/5/29閲覧)
執筆:2021年7月
最終更新:2024年9月
文責:一般財団法人阪大微生物病研究会
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