免疫でがん細胞をやっつけられないの?

免疫細胞は”自分でなくなった自分”であるがん細胞を攻撃します。しかし、がん細胞の一部にはそれをすり抜けて増殖する能力があります。

がんは、自身の細胞が異常をきたして急速に増殖し、最終的には体内の他の部位に転移する病気です。がん細胞は、自分自身の細胞でありながら変異しています。そこで免疫細胞はがん細胞を病原体に近いものとして認識し、がん細胞に対して免疫反応を起こします。一方で、がん細胞は免疫システムの監視をかいくぐって増殖し、抗がん免疫反応を弱めることもできます。こうしたがん細胞と免疫細胞の相互作用を研究することががん免疫療法という医療の研究対象になっています。 

がん細胞はがん抗原というがん特有の部位を持ちます。そこで、このがん抗原を標的に樹状細胞の抗原提示能力を上げるがんの樹状細胞療法が考えられましたが、がん抗原は変異していくため、その効果は充分といえませんでした。その後、本庶佑博士らによって、がん細胞そのものでなく、免疫細胞の攻撃を調節する能力(免疫チェックポイント)に注目し、がんによって弱められたT細胞の力を復活させる「免疫チェックポイント阻害療法 」が考案され、実現されました。

執筆:2021年9月
文責:大阪大学免疫学フロンティア研究センター・微生物病研究所

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