1987年利根川進博士のノーベル賞、何がすごい?

膨大な数の病原体に対してB細胞がどのように抗体を作るかを明らかにしたことです。

抗体は免疫グロブリン (Ig) というタンパク質で、免疫細胞のひとつであるB細胞がつくります。B細胞はあらかじめ抗体の部品の設計図となる遺伝子を持っていて、抗原の情報をもとに部品を組み合わせて抗体が作られます。
免疫グロブリンは2本の重鎖と2本の軽鎖で構成されていて、重鎖と軽鎖はともに可変領域と定常領域からなっています。未知の病原体を含め、あらゆる感染症に対応する抗体の特異性が極めて多様なのは、可変領域、多様性領域、結合領域の各遺伝子をランダムに組み替えられるからです(下図)。

つまり、この研究によって免疫系の抗体産生が、いわば部品の組み合わせであらゆる感染症に対応する原理が明らかになりました。この免疫の根本に迫る事実を発見したのが利根川進博士で、ノーベル医学・生理学賞では珍しい単独受賞でした(通常は同一分野で2~3人が同時に受賞)。

さらに、V領域とD領域とJ領域をつなげるときに新しい分子が付け加わったり、逆に抜けたりするので、実質億単位の抗体の種類がつくられます。

執筆:2021年9月
文責:大阪大学免疫学フロンティア研究センター・微生物病研究所

感染症

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